アットマークエレ:プリント基板制作に関する技術アイデアまとめ

補強板の材料

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柔らかさが特徴のフレキシブル基板も、部品実装領域や端子部などは、一定の硬さや厚さが必要となります。これを実現するのに使用するのが補強板です。補強板も使用材料毎に特徴があります。

フレキシブル基板を部分的に硬くする補強板

 フレキシブル基板は柔らかくて自由に曲げられることが特徴ですが、全てが柔らかくては扱いに支障をきたします。特に部品実装や接続を行うには、ある程度の厚さと硬さが必要になります。このようにフレキシブル基板の一部を硬くするのに用いられるのが補強板です。現在生産されているフレキシブル基板の大半の製品は、なんらかの形で補強板が付けられています。

補強板の材料は何でも良いはずではあるけれども……

 使用目的を満足させるだけであれば、補強板材料の選択に技術的な制約はありません。また補強板を貼り付ける接着剤も自由に選ぶことができます。しかしながら、フレキシブル基板の製作を専門のメーカーに委託するとなると、メーカーが普段使い慣れている材料の中から選ぶことになるため、現実的には、通常プリント基板やフレキシブル基板の製造工程で使っているガラスエポキシ板やポリイミドシートなどが中心となります。その他の材料を選択する場合は、特注品かユーザーからの支給品ということになります。

 また、アルミニウムやステンレススチールなどの金属板は、通常のプリント基板材料では得られない性質を持っているため、特定用途では大量に使われています。このため、メーカーによっては、特定仕様のアルミニウム板やステンレススチール板を標準品に準ずる扱いにしているメーカーもあります。

01_補強板を使用したフレキシブル基板の一例 図1. 補強板を使用したフレキシブル基板の一例

もっとも多く使われている補強板の材料

 一般的なフレキシブル基板メーカーが補強板用材料として標準的に在庫しているのは、硬質(リジッド)基板やフレキシブル基板のベース層として使用している材料です。具体的には次のような材料です。

表1. 補強板材料の特徴

材料 厚さの一例 特徴
ガラスエポキシ 0.1〜2.5mm 高信頼性、はんだ処理可、熱硬化性接着剤可
ポリイミド 0.05〜0.25mm 高信頼性、はんだ処理可、熱硬化性接着剤可
PET 0.05〜0.25mm 低耐熱性、はんだ処理不可、感圧性接着剤のみ
紙フェノール 1.6mm 低耐熱性、はんだ処理可、感圧性接着剤のみ

 

ポリイミドとPETの特徴

 回路密度が低く実装部品がリード端子だった時代、補強板の材料は紙フェノールやガラスエポキシが多く使われていました。いずれもはんだ付け処理を行える耐熱性はあります。まず紙フェノールは熱硬化性の接着材が適用できないため、取り付ける方法は感圧性接着剤しか使えず、あまり高信頼性は期待できません。高信頼性が必要とされる場合には、ガラスエポキシを熱硬化性接着剤を使って貼り付けます。ただ最近は、微細なチップ部品を搭載する基板が増えています。このような場合は、厚手のポリイミドシートを熱硬化性接着剤で固定する構成も多くなっています。

 FFCコネクタへの挿入部は、はんだ付けのような高温プロセスにさらされる可能性がないため、耐熱性のあるポリイミドシートを使わず、PETシートも使えます。ただし、PETシートは熱硬化性接着剤のプロセスにたえられませんので、感圧性接着剤を使います。

02_各種補強板を使用したフレキシブル基板 図2. 各種補強板を使用したプリント基板

多様な補強板材料

 フレキシブル基板の使い方が多様化するにしたがって、補強板の形態や材質も標準的なプリント基板材料以外が使われることもあります。すでに広く使われている各種金属板の他に、各種プラスチック成型加工品、ゴム、セラミック、さらにはエレクトロニクスには一見縁のない紙、布、木材なども補強板の材料になりえます。

金属を使用した補強板

 金属補強板の材料は、通常の補強板材料と異なる次のような特徴があります。
 ・導電性:アース回路として使えます。
 ・成型性:三次元構成物の形成、ネジ止め固定、筺体の一部として使用可能です。
 ・熱導電性:ヒートシンクとして使うことができます。
 ・耐熱性:有機材料に比べてはるかに高い温度でも安定、高温でも熱劣化しません。

 金属補強板の材料は、化学的に安定で耐食性に優れたアルミニウムやステンレススチール板が多く使われています。また、バネ性を持たせる場合などは、特殊合金が使われることもあります。

 なお金属補強板は、熱電導性に注目して自動車のパワートレイン系モジュール用のフレキシブル基板に使われたりもしています。この場合フレキシブル基板のほぼ全面がアルミニウム補強板で覆われ、金属補強板はヒートシンクとなって除熱します。その他に、部品実装に際してはキャリアとなり、三次元成形後は筐体の一部になります(図3)。

 また、ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドの配線は、ステンレススチールの補強板がヘッドサスペンションと呼ばれる構造体の一部になっています。この場合はステンレススチールのバネ性を活かしています。

03_金属板を使用したフレキシブル基板の一例 図3. 金属板を使用したフレキシブル基板の一例

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